刑事系・刑事訴訟法
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第四章 即決裁判手続
第一節 即決裁判手続の申立て

第三百五十条の二
 検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件については、この限りでない。
  2 前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
  3 検察官は、被疑者に対し、前項の同意をするかどうかの確認を求めるときは、これを書面でしなければならない。この場合において、検察官は、被疑者に対し、即決裁判手続を理解させるために必要な事項(被疑者に弁護人がないときは、次条の規定により弁護人を選任することができる旨を含む。)を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない。
  4 被疑者に弁護人がある場合には、第一項の申立ては、被疑者が第二項の同意をするほか、弁護人が即決裁判手続によることについて同意をし又はその意見を留保しているときに限り、これをすることができる。
  5 被疑者が第二項の同意をし、及び弁護人が前項の同意をし又はその意見を留保するときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
  6 第一項の書面には、前項の書面を添付しなければならない。


第三百五十条の三
 前条第三項の確認を求められた被疑者が即決裁判手続によることについて同意をするかどうかを明らかにしようとする場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。
  2 第三十七条の三の規定は、前項の請求をする場合についてこれを準用する。


第二節 公判準備及び公判手続の特例

第三百五十条の四
 即決裁判手続の申立てがあつた場合において、被告人に弁護人がないときは、裁判長は、できる限り速やかに、職権で弁護人を付さなければならない。


第三百五十条の五
 検察官は、即決裁判手続の申立てをした事件について、被告人又は弁護人に対し、第二百九十九条第一項の規定により証拠書類を閲覧する機会その他の同項に規定する機会を与えるべき場合には、できる限り速やかに、その機会を与えなければならない。


第三百五十条の六
 裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、弁護人が即決裁判手続によることについてその意見を留保しているとき、又は即決裁判手続の申立てがあつた後に弁護人が選任されたときは、弁護人に対し、できる限り速やかに、即決裁判手続によることについて同意をするかどうかの確認を求めなければならない。
  2 弁護人は、前項の同意をするときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。


第三百五十条の七
 裁判長は、即決裁判手続の申立てがあつたときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いた上で、その申立て後(前条第一項に規定する場合においては、同項の同意があつた後)、できる限り早い時期の公判期日を定めなければならない。


第三百五十条の八
 裁判所は、即決裁判手続の申立てがあつた事件について、第二百九十一条第二項の手続に際し、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述をしたときは、次に掲げる場合を除き、即決裁判手続によつて審判をする旨の決定をしなければならない。
一 第三百五十条の二第二項又は第四項の同意が撤回されたとき。
二 第三百五十条の六第一項に規定する場合において、同項の同意がされなかつたとき、又はその同意が撤回されたとき。
三 前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。
四 当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。


第三百五十条の九
 前条の手続を行う公判期日及び即決裁判手続による公判期日については、弁護人がないときは、これを開くことができない。


第三百五十条の十
 第三百五十条の八の決定のための審理及び即決裁判手続による審判については、第二百八十四条、第二百八十五条、第二百九十六条、第二百九十七条、第三百条から第三百二条まで及び第三百四条から第三百七条までの規定は、これを適用しない。
  2 即決裁判手続による証拠調べは、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。


第三百五十条の十一
 裁判所は、第三百五十条の八の決定があつた事件について、次の各号のいずれかに該当することとなつた場合には、当該決定を取り消さなければならない。
一 判決の言渡し前に、被告人又は弁護人が即決裁判手続によることについての同意を撤回したとき。
二 判決の言渡し前に、被告人が起訴状に記載された訴因について有罪である旨の陳述を撤回したとき。
三 前二号に掲げるもののほか、当該事件が即決裁判手続によることができないものであると認めるとき。
四 当該事件が即決裁判手続によることが相当でないものであると認めるとき。
  2 前項の規定により第三百五十条の八の決定が取り消されたときは、公判手続を更新しなければならない。ただし、検察官及び被告人又は弁護人に異議がないときは、この限りでない。


第三節 証拠の特例

第三百五十条の十二
 第三百五十条の八の決定があつた事件の証拠については、第三百二十条第一項の規定は、これを適用しない。ただし、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。


第四節 公判の裁判の特例

第三百五十条の十三
 裁判所は、第三百五十条の八の決定があつた事件については、できる限り、即日判決の言渡しをしなければならない。


第三百五十条の十四
 即決裁判手続において懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の執行猶予の言渡しをしなければならない。




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